意思能力に関する判例

取引が有効とされた事例

アルツハイマーを発症していたが他者とのコミュニケーション能力に格別の問題がなかった(東京地判平成21年2月25日)・多発性脳梗塞のため認知症状では常時判断能力を喪失していたとはいえず売却代理権授与の内容も理解していた(東京地判平成8年11月27日)・老齢性認知症中等度から重度であったが公証役場にて遺言内容の変更をする旨の遺言公正証書の作成、民事調停手続き、仲介業者と媒介契約を締結するなど多方面から問題がなかった(東京地判平成21年11月10日)

取引が無効とされた事例

老人性認知症により売却代金が非常に低廉で著しく不利な内容で合理的判断を有する者の行動としては理解しがたい(東京地判平成20年12月24日)・アルツハイマー型認知症により自宅売却により代わりに住居が必要になるという問題にも思い至らない(東京地判平成21年10月29日)・認知症で高齢者の判断能力が低い状態に乗じた客観的に必要にない取引として公序良俗違反(大阪高裁平成21年8月25日)

*このように医学上認知症と診断されても不動産取引において意思能力は必ずしも否定されていません、また意思能力は認められるが高齢者保護の観点から公序良俗違反により無効とされた事例もあります。訴えがなかった場合取引はどうなっているのでしょうか?何もなかったように取引が完了しているのではないでしょうか。大変な事であります。

意思能力の判断要素について次に考えてみます。